ココロまいるど

武道と瞑想の実践と、お釈迦様の教えから学んだことを、色々なところからヒントを得て記事にしています。

十思の六

2011.09.22 Thursday 01:01
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    JUGEMテーマ:こころ
     

    怠りなまける心配のあるときには、始めを慎み終わりを敬することを思い、
     

    いまは書籍にもなっていますが、北海道大大学院農学研究科の長谷川英祐助手(当時)が行った実験に、30匹ほどのアリの集団を3つ用意し、1匹ずつ印をつけて行動を観察したものがあります。その結果、2割のアリはよく働き、6割のアリは普通に働き、2割のアリは遊んでいることが分かりました。

    よく働くというイメージのある「働きアリ」でも、よく働くものもいれば、遊んでいるものもいる。その遊んでいるものも、敵が侵入してくれば、排除するために必死で働いているとのこと。平常時で遊んでいるものも、緊急事態では必死に働いているわけです。

    このことから、各々が自分の属する集団に対して発揮できる固有の才能をもっており、それが発揮できる場面で効果的に働くことにより、集団としてよりよく存続できるよう全体でバランスをとっていることがわかります。自然界においては、全てが同じレベルで働くことはなく、個体によってパフォーマンスが違っていて当然だということです。

    ですから、よく働くものは偉くて、遊んでいるものはお荷物だという評価は、物事を一面からしか見ていない、人間の勝手に考えた感心的な価値判断に過ぎないということです。

     

     人においても、その人が苦行を志していない限り、しんどいことは嫌で、できるだけ楽をしたいと思っています。

     もともと人は、仕事が嫌いで遊ぶことが好きだと思っていればよいのです。仕事は怠けがちだということを事業の計画に先に盛り込んでおくのです。

     事業の推進に責任を負っているリーダーは、できるだけ優秀な人材を部下に持ちたいところですが、優秀な人材など、そうごろごろいるわけではありません。いまいる人材で何とかこなさないといけない状況に常に立たされています。

     ヒト、モノ、カネが大切なものとしてあげられますが、ヒトを考えることが第一です。モノとカネは、結局はヒトが調達し、ヒトが使うものだからです。一方、ヒトを連れてくるのもヒトですし、ヒトを育てるのもヒトです。ですから、大切なのはヒトで、これを第一に考えるべきです。

     

    例外なく、人は働いていると必ず疲れます。連続して働く時間が長ければ長いほど、疲労がたまり、仕事の能率が落ちてきます。ですから、事業を推進する際には、人が疲労することも考えて、休息に係る要素も盛り込んでおかないといけません。ここで、注意しなければならないのは、休息をとることは、怠けることとは異なるということです。休息は事業推進のパフォーマンスを落とさないために設けるものです。一方、怠けることは、もともとパフォーマンスが落ちている状態であるということです。事業計画の中にメンバーのパフォーマンスの悪い状態をあらかじめ織り込んでおきます。つまり、事業の期間とマンパワーには、メンバーが怠けることを前提にしつつも、休息の必要性にも考慮し、慎重に計画を立てるようにします。そして、これを計画の基準とするのです。

    こうすると基準の計画はひどい状態からのスタートになりますが、事業の評価としては最低限認められる状態です。基準まで達しただけでも、それはそれで成果として認められるものになりますので、「良い」と評価できるということです。その状態から事業の課題を整理し、解決していくと、基準より好ましいパフォーマンスが出せます。

    そうすれば、最終的に達成したレベルがどうであれ、事業が成功したと評価できる状態にあるならば、その事業に関わったメンバーは皆よくやったことになります。成功を称えあうことができるし、成功の喜びを分かちあえます。その過程で、事業に関わるメンバーがそれぞれの担当で仕事に集中し、順調に進んでいたならば、さらに喜ばしいことです。

     

    さて、遊んだり怠けたりする傾向のある、いわゆるパフォーマンスの悪いメンバーに対しては、仕事をしていないなら休息などいらないだろうと思いがちですが、休息を与えないとストレスが溜まり、さらに機能しなくなります。仕事場にでてきている以上、その時の自分の行動として仕事を最優先で選択しているのであり、仕事をするという意思表示の表れです。事業のリーダーは、遊んでいるメンバーを、それがその人の仕事のスタイルであることを認めないといけません。

    そこで、事業全体のパフォーマンスをあげるにはどうすればよいかを考えてみましょう。

    事業を推進するときよく使われる言葉に、「一丸となって」という表現があります。メンバー全員がひとつとなって頑張ろうと、精神的にも意気高く同じ状態にあることを求めているわけです。確かに、全体的にまとまることは大切なのですが、メンバーはそれぞれ異なった個性をもった人間です。同じ集中力、同じ仕事のスタイル、同じモチベーションを持っていません。同じ作業でも、集中して手早く仕上げしまうメンバーもいれば、少しやっては休み、少しやっては違う仕事にかかって仕上げるメンバーもいます。リーダーの注力すべきところは、メンバーの個性を認めて、各自の仕事のやり方がやりやすい環境と条件を整えることにあります。

     

    ところで、事業の進捗においては、目標と工程の管理が重要視されますが、それが最も大切なことだと本当に言えるのでしょうか?

     

    目標は、達成すべき量や期間について数値で掲げられることが多く、一度掲げられると、その数値に縛られてしまい、なかなか修正したり取り下げたりはできません。

    ここで考えないといけないことは、世の中には、変化しないものはないということです。事業を取り巻く状況も時々刻々と変化しています。メンバーの状態も変化していますし、事業に費やせる時間も刻々と減っています。想定外の事故が起こるなど外的な要因によっても変化しています。そもそも目標となる数値は決めた時点での状況や条件などから判断され、はじき出されたものです。その決定過程には多くの仮定が含まれています。

    ここで、仮定するということは、すべては変わることを暗に認識していることに気づかねばなりません。通常では不確定要素があまりにも多いので、予想をたてることができない。そこで、条件を仮に固定することで、理解できる範囲にまで狭めているのです。ところが、現実には固定した要素は変動していますから、結局ところどうなるのかは、実際に測定してみないと分かりません。ですから、設定した目標自体がいい加減なものなのです。これにしばられることは、ナンセンスです。

    「一丸」とは、どれだけ飛ばすかよりも、どこへ飛ぶかの方が大切でしょう。事業のメンバー全員が共有しなければならないのは、目的なのです。目標ではありません。

    何のためにメンバー全員でこの事業を行っているのか。これが共有されて、全体としてひとつとなっていれば、メンバー各人が自分のスタイルで仕事を行い、必ず最高のパフォーマンスで事業を達成します。評価なんていりません。

     

    このように、リーダーがまずなすべきは、事業に関わるすべての者と目的を共有することです。

     

    ※2012年1月22日に、一部修正しています。
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